不動産相続の手続きと評価方法ガイド

不動産相続とは

不動産相続とは、被相続人(亡くなった方)が所有していた土地・建物・マンションなどの不動産を、相続人が引き継ぐことをいいます。日本における相続財産の中で不動産は最も大きな割合を占めており、国税庁の統計によると相続財産全体の約40%が不動産です。

不動産相続では、相続税の計算に必要な「評価額の算定」、法務局への「相続登記」、遺産分割協議における「分割方法の決定」など、預貯金や有価証券の相続とは異なる特有の手続きが必要になります。特に2024年4月からは相続登記が義務化されたため、登記手続きを放置することはできなくなりました。

不動産の相続は、評価方法が複雑であること、分割が容易ではないこと、維持管理にコストがかかることなどから、相続トラブルの原因になりやすい分野です。このページでは、不動産相続に関する基本的な知識から具体的な手続き方法まで、体系的に解説します。

相続登記の義務化

❗ 2024年4月1日から相続登記が義務化されました

不動産登記法の改正により、2024年4月1日以降、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務付けられました。正当な理由なく期限内に登記しない場合、10万円以下の過料の対象となります。

また、2024年4月1日より前に相続が発生している場合でも、2027年3月31日までに登記申請が必要です。未登記の不動産をお持ちの方は、早急に対応しましょう。

相続登記の義務化は、所有者不明土地の問題を解消するために導入された制度です。全国の土地の約24%が所有者不明であるとされ、公共事業や災害復旧の妨げとなっていました。義務化により、不動産の所有者情報を正確に把握できるようにすることが目的です。

相続登記には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と住民票、遺産分割協議書(法定相続分以外で分割する場合)、固定資産評価証明書などの書類が必要です。登録免許税として固定資産税評価額の0.4%を納付します。

相続登記の詳しい手続き方法や必要書類については、以下の関連ページで詳しく解説しています。

不動産の評価方法

相続税を計算するためには、不動産の相続税評価額を求める必要があります。不動産の評価方法は、土地と建物で大きく異なります。

土地の評価方法

土地の相続税評価額は、原則として「路線価方式」で算出します。路線価とは、国税庁が毎年7月に発表する道路ごとの1平方メートルあたりの価格で、市街地の土地評価に用います。路線価が設定されていない地域(郊外・農村部など)では「倍率方式」を使い、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて評価額を算出します。

土地の評価方法の比較
評価方法計算式適用地域
路線価方式路線価 × 面積 × 補正率路線価が設定されている地域(主に市街地)
倍率方式固定資産税評価額 × 倍率路線価が設定されていない地域

建物の評価方法

建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。自用の建物(自分で使用している建物)の場合は固定資産税評価額の1.0倍、貸家(賃貸に出している建物)の場合は固定資産税評価額の0.7倍(借家権割合30%を控除)で評価します。

💡 不動産の時価と相続税評価額の違い

不動産の相続税評価額は、一般的に時価(実勢価格)の70~80%程度とされています。そのため、現金で相続するよりも不動産で相続した方が、相続税評価額を圧縮できるメリットがあります。ただし、過度な節税目的での不動産購入はタワーマンション節税規制(2024年1月施行)により制限されています。

不動産の分割方法

不動産は預貯金と異なり、簡単に分割することができません。相続人が複数いる場合、以下の4つの分割方法から最適なものを選択する必要があります。

不動産の4つの分割方法
分割方法内容メリットデメリット
現物分割土地を分筆して各相続人に分配各自が独立した所有権を取得土地の価値が均等になりにくい
代償分割不動産を1人が取得し、他の相続人に金銭を支払う不動産を維持できる取得者に資金力が必要
換価分割不動産を売却し、代金を分配公平に分配しやすい売却に時間がかかる場合がある
共有分割相続人全員の共有名義にする手続きが比較的簡単将来の売却・管理で問題が生じやすい

実務上最も多く選択されるのは「代償分割」と「換価分割」です。共有分割は手続きが簡単ですが、将来的に共有者間で売却や管理に関するトラブルが発生しやすいため、可能な限り避けることをお勧めします。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、被相続人の居住用や事業用の土地について、相続税評価額を大幅に減額できる制度です。要件を満たせば最大80%の減額が可能であり、不動産相続における最も重要な節税対策の一つです。

小規模宅地等の特例の種類と減額割合
宅地の種類限度面積減額割合
特定居住用宅地等330㎡80%
特定事業用宅地等400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等400㎡80%
貸付事業用宅地等200㎡50%

例えば、路線価評価額が5,000万円の自宅の土地(200㎡)に特定居住用宅地等の特例が適用できれば、5,000万円 × 80% = 4,000万円が減額され、相続税評価額は1,000万円となります。この特例の適用には相続税の申告が必要です。

不動産相続について専門家に相談する

不動産の相続は評価・登記・税金と複雑な手続きが多いため、司法書士や税理士への相談をお勧めします。

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よくある質問

相続登記は義務ですか?
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行う必要があります。正当な理由なく期限内に申請しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。なお、2024年4月1日より前に相続した不動産についても、2027年3月31日までに登記が必要です。
相続した不動産の評価方法は?
相続税における不動産の評価は、土地と建物で異なります。土地は「路線価方式」または「倍率方式」で評価し、建物は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。路線価が設定されている地域では路線価方式を使い、それ以外の地域では倍率方式を使います。
不動産を複数の相続人で分けるにはどうすればよいですか?
不動産の分割方法には、現物分割(土地を分筆して分ける)、代償分割(不動産を取得した人が他の相続人に金銭を支払う)、換価分割(売却して代金を分配する)、共有分割(共有名義にする)の4つがあります。それぞれメリット・デメリットがあるため、状況に応じて最適な方法を選択しましょう。
相続した不動産を売却すると税金はかかりますか?
はい、相続した不動産を売却すると譲渡所得税がかかります。税率は所有期間(被相続人の取得時からの通算)によって異なり、5年以下の短期譲渡は39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%です。ただし、相続税の取得費加算の特例や3,000万円特別控除などの軽減措置を利用できる場合があります。
小規模宅地等の特例とは何ですか?
小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた土地や事業に使っていた土地について、一定の要件を満たす場合に相続税評価額を最大80%減額できる制度です。特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)、特定事業用宅地等(400㎡まで80%減額)、貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減額)の3種類があります。