相続不動産の評価方法【土地・建物】

不動産評価の基本

相続税を計算するためには、相続財産の価額を正確に評価する必要があります。不動産の評価は「財産評価基本通達」に基づいて行われ、土地と建物で評価方法が大きく異なります。

土地の評価には「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあり、該当する土地に路線価が設定されているかどうかで使い分けます。建物の評価は比較的シンプルで、固定資産税評価額をそのまま使用するのが原則です。

不動産の相続税評価額は、一般的に時価(実勢価格)よりも低くなる傾向があります。土地は路線価が公示地価の約80%で設定され、建物は固定資産税評価額が再建築価格の50~70%程度とされているため、不動産を相続する方が現金で相続するよりも相続税を抑えられる場合が多いです。

ℹ 不動産評価の4つの価格

不動産には「一物四価」と呼ばれる4つの価格があります。実勢価格(市場での取引価格)、公示地価(国土交通省が毎年3月に公表)、路線価(国税庁が毎年7月に公表、公示地価の約80%)、固定資産税評価額(市区町村が3年ごとに見直し、公示地価の約70%)の4つです。相続税の計算では路線価を基準とします。

路線価方式による土地評価

路線価方式は、市街地にある土地の評価に用いられる方法です。道路(路線)ごとに設定された1平方メートルあたりの価格(路線価)に、土地の面積を掛け、さらに土地の形状や利用状況に応じた補正率を乗じて評価額を算出します。

路線価方式の計算式:路線価(千円/㎡) × 土地面積(㎡) × 各種補正率 = 土地評価額

路線価図の見方

路線価図では、道路に面する部分に「300D」のような表記がされています。この数字部分(300)は路線価を千円単位で示しており、この場合は1平方メートルあたり30万円です。アルファベット(D)は借地権割合を表しています。

路線価図のアルファベットと借地権割合
記号借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

路線価方式の計算例

例えば、路線価300千円/㎡の道路に面した200㎡の土地で、奥行補正率が0.97の場合の評価額は以下のとおりです。

300千円 × 200㎡ × 0.97 = 5,820万円

一つの道路にのみ面している土地(一方路線)の場合は上記のシンプルな計算ですが、角地(2つの道路に面する土地)や二方路線地の場合は、側方路線影響加算率や二方路線影響加算率を加味した計算が必要です。

倍率方式による土地評価

倍率方式は、路線価が設定されていない地域(主に郊外や農村部)の土地評価に用いられます。固定資産税評価額に、国税庁が定めた一定の倍率を掛けて評価額を算出します。

倍率方式の計算式:固定資産税評価額 × 評価倍率 = 土地評価額

倍率方式の場合、固定資産税評価額に各種補正が既に反映されているため、路線価方式のような個別の補正率計算は不要です。倍率は地域や地目(宅地・田・畑・山林など)によって異なり、宅地の場合は概ね1.0~1.2程度が多く見られます。

💡 倍率方式の確認方法

評価倍率は国税庁のウェブサイト「路線価図・評価倍率表」で確認できます。倍率表で該当地域の欄に「路線」と記載されている場合は路線価方式で評価し、数値が記載されている場合はその数値が倍率となります。

各種補正率について

路線価方式で土地を評価する際には、土地の形状や利用状況に応じてさまざまな補正率を適用します。主な補正率は以下のとおりです。

主な補正率の種類と適用場面
補正率の種類適用場面補正の方向
奥行価格補正率標準的な奥行に対して奥行が長い・短い土地減額(0.80~1.00)
側方路線影響加算率角地(2つの道路に面する土地)増額(加算)
二方路線影響加算率正面と裏面が道路に面する土地増額(加算)
不整形地補正率整形でない土地(三角形、L字型等)減額
間口狭小補正率間口(道路に面する幅)が狭い土地減額
奥行長大補正率奥行が間口に比べて著しく長い土地減額
がけ地補正率がけ地を含む土地減額
規模格差補正率地積規模の大きな宅地(500㎡以上等)減額

補正率を適用することで、整形な標準的な土地に比べて使い勝手が悪い土地(不整形地、間口が狭い土地など)は評価額が低くなります。補正率の適用は専門的な判断が必要な場合が多いため、複雑なケースでは税理士に相談することをお勧めします。

建物(家屋)の評価方法

建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額がそのまま評価額となります。固定資産税評価額は、市区町村が3年に一度の評価替えで算定するもので、固定資産税の納税通知書に記載されています。

自用家屋の評価

自分で住んでいる家屋や空き家など、賃貸に出していない建物は「自用家屋」として評価します。自用家屋の相続税評価額は固定資産税評価額の1.0倍、つまり固定資産税評価額そのものです。

自用家屋の評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0

貸家の評価

賃貸に出している建物は「貸家」として評価します。貸家は借家人の権利(借家権)が設定されているため、その分だけ評価額が低くなります。借家権割合は全国一律30%です。

貸家の評価額 = 固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合30%) = 固定資産税評価額 × 0.7

ℹ 建築中の家屋の評価

相続開始時点で建築中の家屋は、その家屋の費用現価(建築費のうち相続開始時までに投じた金額)の70%で評価します。完成した家屋とは評価方法が異なりますのでご注意ください。

路線価方式による土地評価計算ツール

路線価・土地面積・奥行補正率を入力して、相続税における土地の評価額を計算できます。

千円/㎡

路線価図に記載されている数値を入力してください(例:300)

登記簿面積または実測面積を入力してください

不明な場合は1.00のままでお使いください。国税庁の奥行価格補正率表で確認できます。

⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。

倍率方式による土地評価計算ツール

固定資産税評価額と評価倍率を入力して、倍率方式による土地の評価額を計算できます。

万円

固定資産税納税通知書に記載されている土地の評価額を入力してください

国税庁の評価倍率表で確認できます。不明な場合は1.1でお試しください。

⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。

家屋評価計算ツール

固定資産税評価額と利用状況を入力して、建物の相続税評価額を計算できます。

万円

固定資産税納税通知書に記載されている建物の評価額を入力してください

建物の利用状況

⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。

よくある質問

路線価はどこで確認できますか?
路線価は国税庁のウェブサイト「路線価図・評価倍率表」で確認できます。毎年7月1日に当年分の路線価が公表されます。路線価図には道路ごとに1平方メートルあたりの価格(千円単位)が記載されています。例えば「300D」と記載されていれば、路線価は30万円/㎡で借地権割合はD(60%)です。
路線価と実勢価格(時価)の関係は?
路線価は公示地価の約80%を目安に設定されています。実勢価格(時価)は公示地価とほぼ同水準か、立地によってはそれ以上になることもあるため、路線価は実勢価格の概ね70~80%程度となる傾向があります。ただし、地域や物件によって差がありますので、あくまで目安として参考にしてください。
倍率方式の倍率はどこで調べられますか?
評価倍率は、国税庁のウェブサイト「路線価図・評価倍率表」の「評価倍率表」で確認できます。地域ごとに宅地・田・畑・山林などの地目別に倍率が設定されています。路線価が設定されていない地域の土地を評価する際に使用します。
貸家と自用家屋で評価額が異なるのはなぜですか?
貸家(賃貸物件)は借家人の権利(借家権)が設定されているため、自由に使用・処分できないことから、自用家屋に比べて評価額が低くなります。具体的には、自用家屋の評価額から借家権割合(全国一律30%)を控除した金額が貸家の評価額となります。つまり、貸家の評価額は自用家屋の70%です。