遺産分割協議の進め方と協議書の書き方

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、被相続人が残した遺産について、相続人全員が話し合って分割方法を決める手続きです。遺言書がない場合や、遺言書で指定されていない財産がある場合に行われます。日本の相続では最も一般的な遺産分割の方法であり、相続の大多数のケースで遺産分割協議が行われています。

遺産分割協議の最大の特徴は、相続人全員が合意すれば法定相続分にとらわれない自由な分割が可能であるという点です。たとえば、「被相続人と同居していた長男が自宅を取得する」「介護に尽力した長女に多く配分する」といった、個々の事情に応じた柔軟な分割ができます。

一方で、相続人が一人でも反対すれば協議は成立しません。また、相続人を一人でも除外して行われた協議は無効です。全員の参加と合意が絶対条件であることを十分に理解した上で、協議に臨むことが大切です。

協議の要件

❗ 全員参加の必要性

遺産分割協議は、法定相続人全員が参加しなければ無効です。行方不明の相続人がいる場合は「不在者財産管理人」の選任が、認知症の相続人がいる場合は「成年後見人」の選任が必要です。相続人の確認を怠ると、後から協議がやり直しとなるリスクがあります。

遺産分割協議が有効に成立するための要件は以下のとおりです。

  • 相続人全員の参加:法定相続人を一人でも欠いた協議は無効です。被相続人の戸籍を出生まで遡って調査し、すべての相続人を特定します。
  • 全員の合意:多数決ではなく、全員一致が必要です。一人でも反対すれば協議は成立しません。
  • 意思能力があること:各相続人が協議内容を理解し、判断できる能力が必要です。認知症などで意思能力が不十分な場合は、成年後見人の選任が必要です。
  • 詐欺・強迫がないこと:詐欺や脅迫によって行われた協議は取り消すことができます。自由な意思に基づく合意であることが求められます。

協議の進め方(手順)

遺産分割協議は以下の手順で進めます。一つひとつのステップを確実に行うことが、円滑な協議の鍵です。

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    相続人の確定

    被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取得し、法定相続人を漏れなく確定します。認知された子や養子がいないかも確認が必要です。相続人が一人でも欠けた状態で行われた協議は無効となります。

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    遺産の調査・財産目録の作成

    預貯金(通帳・残高証明書)、不動産(登記簿謄本・固定資産税評価証明書)、有価証券、生命保険、借入金など、すべての財産と負債を調査し、一覧表(財産目録)にまとめます。

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    遺言書の有無の確認

    公正証書遺言は最寄りの公証役場で検索できます。自筆証書遺言は法務局の保管制度を利用していない場合、家庭裁判所で検認手続きが必要です。遺言書がある場合は、原則としてその内容に従います。

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    相続人全員での協議

    相続人全員が参加して、誰がどの財産をどれだけ取得するかを話し合います。全員が一堂に会する必要はなく、電話やメール、書面のやり取りでも有効です。ただし、全員の合意が必須です。

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    遺産分割協議書の作成

    合意内容を遺産分割協議書にまとめます。相続人全員が署名し、実印で押印します。印鑑証明書も添付します。不動産がある場合は登記に使用できる形式で作成する必要があります。

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    名義変更・各種手続き

    協議書に基づき、不動産の相続登記、預貯金の解約・名義変更、有価証券の名義変更、自動車の名義変更などの手続きを行います。

必要書類

遺産分割協議およびその後の手続きに必要な書類は以下のとおりです。書類の取得には時間がかかるものもありますので、早めに準備を始めましょう。

書類名取得先用途
被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡)市区町村役場相続人の確定
被相続人の住民票除票市区町村役場相続人の確定・登記
相続人全員の戸籍謄本市区町村役場相続人の証明
相続人全員の印鑑証明書市区町村役場協議書への押印証明
不動産の登記簿謄本法務局不動産の特定
固定資産税評価証明書市区町村役場不動産の評価額確認
預貯金の残高証明書各金融機関預貯金の確認

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書は、協議の結果を書面に残す重要な文書です。法律で定められた書式はありませんが、以下のポイントを押さえて作成する必要があります。

記載すべき項目

  • タイトル:「遺産分割協議書」と記載します。
  • 被相続人の情報:氏名、生年月日、死亡日、最後の住所、本籍地を記載します。
  • 合意内容:「相続人全員で協議を行い、以下のとおり遺産を分割することに合意した」旨を記載します。
  • 各財産の取得者と内容:不動産は登記簿の表示どおり、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号・残高を正確に記載します。
  • 債務の負担者:借入金などの負債がある場合は、誰が負担するかも明記します。
  • 新たな財産が見つかった場合の取り決め:後日判明した遺産の取扱いについても定めておくとよいでしょう。
  • 相続人全員の署名・押印:住所、氏名を自署し、実印で押印します。
  • 作成日:協議が成立した日付を記載します。

💡 協議書作成のポイント

不動産は登記簿謄本の記載をそのまま転記してください。地番や家屋番号が住所表示と異なる場合がありますので注意が必要です。また、預貯金は金融機関名・支店名だけでなく、口座の種類と口座番号も正確に記載しましょう。

注意点とトラブル防止策

遺産分割協議をスムーズに進め、トラブルを防ぐために以下の点に注意しましょう。

  • 感情的にならない:相続は家族間の感情が絡みやすい場面です。客観的な事実と法律に基づいて冷静に話し合いましょう。
  • 財産の全容を共有する:一部の相続人だけが財産情報を把握している状態は不信感を生みます。財産目録を全員に開示しましょう。
  • 専門家の活用:弁護士、税理士、司法書士などの専門家に相談・依頼することで、法的に正確で公平な協議が期待できます。
  • 議事録の作成:協議の経過を記録しておくと、後の認識の相違を防げます。
  • 相続税の申告期限を意識する:相続税の申告期限(10か月以内)を考慮して、計画的に協議を進めましょう。

よくある質問

相続人の一人が海外に住んでいる場合、協議はどうすればよいですか?
海外在住の相続人も遺産分割協議に参加する必要があります。直接会えない場合は、書面やオンラインでの協議も有効です。海外在住者は印鑑証明書が取得できないため、在外公館(大使館・領事館)で「署名証明(サイン証明)」を取得して代用します。
相続人の中に未成年者がいる場合はどうなりますか?
未成年者は単独で遺産分割協議に参加できないため、法定代理人(親権者)が代わりに参加します。ただし、親権者自身も相続人である場合は利益相反となるため、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。
遺産分割協議書は何通作成すべきですか?
遺産分割協議書は、相続人の人数分に加え、不動産登記用、金融機関提出用なども考慮して、少なくとも相続人の人数+2〜3通を作成することをお勧めします。すべて原本として同じ内容・署名・押印で作成します。
一度成立した遺産分割協議をやり直すことはできますか?
原則として、一度成立した遺産分割協議は法的に有効であり、一方的にやり直すことはできません。ただし、相続人全員が同意すれば、再度協議を行ってやり直すことは可能です。なお、やり直しの場合は贈与税や不動産取得税が課される可能性がありますので、税務上の影響に注意が必要です。

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