相続放棄と遺留分ガイド
相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産に対する相続権の一切を放棄する法的手続きです。民法第938条に基づき、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述することで成立します。相続放棄が認められると、その人は初めから相続人でなかったものとみなされ、プラスの財産もマイナスの財産(借金等)も一切引き継ぎません。
相続放棄は、被相続人に多額の借金がある場合に特に重要な選択肢です。相続は「プラスの財産だけを引き継ぐ」ということが原則としてできないため、借金がプラスの財産を上回る場合は、相続放棄によって負債から身を守ることができます。ただし、一度相続放棄が受理されると原則として撤回できないため、慎重な判断が必要です。
ℹ 相続の3つの選択肢
相続人には以下の3つの選択肢があり、3ヶ月以内に決断する必要があります。
- 単純承認:すべての財産と負債を引き継ぐ(何もしなければ自動的に単純承認)
- 限定承認:プラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐ
- 相続放棄:一切の権利・義務を放棄する
遺留分とは
遺留分とは、一定の法定相続人に保障された最低限の遺産の取り分のことです。民法第1042条に規定されており、被相続人が遺言書で「全財産を第三者に遺贈する」と記載した場合でも、遺留分権利者は最低限の取り分を請求することができます。
遺留分は、被相続人の遺言の自由と相続人の生活保障のバランスを取るための制度です。遺留分が認められる相続人は、配偶者、子(直系卑属)、父母(直系尊属)に限られ、兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合は遺産の3分の1、それ以外の場合は遺産の2分の1です。
2019年7月の民法改正により、遺留分の制度は大きく変わりました。従来の「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」に変更され、現物返還ではなく金銭での支払いを請求する権利に変わりました。これにより、不動産などの分割が困難な財産についても、金銭で解決できるようになっています。
いつ相続放棄すべきか
相続放棄を検討すべきケースは以下のような場合です。
- 被相続人に多額の借金がある場合:借金、連帯保証債務、未払いの税金など、マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合は、相続放棄が最も有効な手段です。
- 相続トラブルに巻き込まれたくない場合:遺産分割で親族間のトラブルが予想される場合、相続放棄によって紛争から離脱することができます。
- 特定の相続人に遺産を集中させたい場合:例えば、実家を継ぐ兄弟にすべての遺産を渡したい場合、他の相続人が放棄することで実現できます。
- 被相続人の事業の負債がある場合:個人事業主や会社経営者が亡くなった場合、事業上の負債が引き継がれるリスクがあります。
⚠ 相続放棄の注意点
相続放棄をすると、プラスの財産(預貯金・不動産など)も一切受け取れなくなります。また、相続放棄は「相続人ごと」に判断するもので、一人が放棄しても他の相続人には影響しません。次順位の相続人に相続権が移る場合があるため、親族間で事前に相談しておくことが重要です。
いつ遺留分を主張すべきか
遺留分侵害額請求を検討すべきケースは以下のような場合です。
- 遺言書で遺産が偏って分配された場合:遺言により特定の相続人や第三者にほぼすべての遺産が渡される場合、遺留分権利者は最低限の取り分を請求できます。
- 生前贈与により遺産が減少している場合:被相続人が生前に多額の贈与をしていた場合、一定の贈与は遺留分の計算基礎に含まれます。
- 相続人としての最低限の権利を守りたい場合:遺留分は法律で保障された権利であり、正当に主張することは法的に認められています。
遺留分侵害額請求には1年間の時効があるため、遺留分が侵害されていることを知ったら速やかに行動する必要があります。まずは内容証明郵便で相手方に請求の意思を表示し、時効を中断(更新)することが重要です。
相続放棄・遺留分 — 記事一覧
相続放棄と遺留分に関する詳細な情報を、以下の4つの記事で解説しています。