相続税の申告方法と期限【完全ガイド】

相続税申告の概要

相続税の申告とは、被相続人(亡くなった方)から相続や遺贈によって財産を取得した相続人が、取得した財産の内容と相続税額を税務署に届け出る手続きです。相続税の申告書は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。

申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。例えば、1月15日に亡くなった場合、同年11月15日が申告期限となります。納税も同じ期限までに行う必要があります。

❗ 申告と納税は同じ期限

相続税は申告だけでなく、納税も10ヶ月以内に行う必要があります。現金一括納付が原則ですが、困難な場合は延納(分割払い)や物納(現物で納付)の制度も利用できます。延納・物納にはそれぞれ要件がありますので、早めに確認しましょう。

申告が必要なケース・不要なケース

申告が必要なケース

以下のいずれかに該当する場合、相続税の申告が必要です。

  • 遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合
  • 配偶者の税額軽減を適用して相続税額がゼロになる場合(申告が適用要件)
  • 小規模宅地等の特例を適用する場合(申告が適用要件)
  • 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与がある場合
  • 農地の納税猶予の特例を受ける場合

申告が不要なケース

遺産総額が基礎控除額以下で、かつ上記の特例を利用しない場合は、相続税の申告は不要です。ただし、遺産が基礎控除額を超えるかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

⚠ 特例適用には申告が必須

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、相続税額が大幅に軽減される非常に有利な制度ですが、必ず期限内に申告書を提出しなければ適用を受けられません。「税額ゼロだから申告不要」と誤解しないよう注意してください。

相続発生後のスケジュール

相続発生後は、さまざまな手続きを並行して進める必要があります。以下が主要なスケジュールです。

7日以内

死亡届の提出

市区町村役場に死亡届を提出し、火葬許可証を取得します。

14日以内

年金・健康保険の届出

年金受給停止届、健康保険・介護保険の資格喪失届を提出します。

3ヶ月以内

相続放棄・限定承認の判断

相続を放棄する場合や限定承認を行う場合は、家庭裁判所に申述します。

4ヶ月以内

準確定申告

被相続人に所得があった場合、死亡日までの所得税の確定申告(準確定申告)を行います。

10ヶ月以内

相続税の申告・納付

相続税申告書を被相続人の住所地の税務署に提出し、相続税を納付します。

1年以内

遺留分侵害額請求

遺留分を侵害された相続人は、1年以内に遺留分侵害額請求を行う必要があります。

3年以内

相続登記

2024年4月より不動産の相続登記が義務化され、3年以内の登記が必要です。

相続税申告の手順

相続税の申告は、以下の手順で進めます。各ステップを計画的に進めることが、期限内の申告につながります。

  1. 1

    相続人の確定

    被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、法定相続人を確定させます。相続放棄がある場合はその確認も行います。

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    相続財産の調査・評価

    預貯金、不動産、有価証券、生命保険金など、すべての相続財産を調査します。不動産は路線価方式または倍率方式で評価し、上場株式は死亡日前後の終値等で評価します。

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    債務・葬式費用の確認

    借入金、未払税金、未払医療費などの債務と、通夜・葬儀にかかった費用を確認します。これらは遺産総額から差し引くことができます。

  4. 4

    遺産分割協議

    相続人全員で遺産の分け方を話し合い、遺産分割協議書を作成します。全員の署名・実印押印が必要です。

  5. 5

    申告書の作成

    相続税申告書(第1表~第15表)を作成します。国税庁のe-Taxを利用したオンライン申告も可能です。

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    申告書の提出・納税

    被相続人の住所地を管轄する税務署に申告書を提出し、相続税を納付します。金融機関の窓口またはe-Taxで納付できます。

必要書類一覧

相続税の申告に必要な書類は多岐にわたります。早めに収集を開始することをお勧めします。

相続税申告に必要な主な書類
書類名取得先用途
被相続人の戸籍謄本(出生~死亡)市区町村役場相続人の確定
相続人全員の戸籍謄本市区町村役場相続人の確認
相続人全員の印鑑証明書市区町村役場遺産分割協議書への添付
被相続人の住民票除票市区町村役場最後の住所地の確認
遺産分割協議書自作または専門家作成遺産の分割内容の証明
遺言書(ある場合)自宅・公証役場・法務局遺産分割の根拠
不動産の登記事項証明書法務局不動産の確認・評価
固定資産税評価証明書市区町村役場不動産の評価
預貯金の残高証明書各金融機関預貯金の評価
有価証券の評価明細書証券会社有価証券の評価
生命保険金の支払通知書保険会社みなし相続財産の確認
死亡退職金の支払通知書勤務先みなし相続財産の確認
葬式費用の領収書葬儀社・寺院等債務控除の計算
借入金の残高証明書金融機関債務控除の計算

💡 書類収集のコツ

戸籍謄本の収集が最も時間がかかる場合が多いため、相続発生後すぐに着手しましょう。被相続人が本籍地を何度も移動している場合、複数の市区町村に請求する必要があります。2024年3月からは「戸籍の広域交付制度」が始まり、最寄りの市区町村窓口で他市区町村の戸籍も取得できるようになりました。

申告漏れ・遅延のペナルティ

相続税の申告を怠った場合や、申告内容に誤りがあった場合には、以下のペナルティが課される可能性があります。

主な加算税・延滞税一覧
ペナルティの種類税率・内容適用されるケース
無申告加算税15%(50万円超の部分は20%)期限内に申告しなかった場合
過少申告加算税10%(期限内申告額超の部分は15%)申告額が少なかった場合
重加算税35~40%意図的に財産を隠した場合
延滞税年2.4%~8.7%(年度により変動)期限までに納付しなかった場合

❗ 税務調査について

相続税の税務調査は、申告後1~2年後に行われることが多く、全体の約20%の申告に対して実施されています。特に、預貯金の移動状況や名義預金の有無、生前贈与の申告漏れが重点的に調査されます。正確な申告を心がけましょう。

申告を円滑に進めるポイント

相続税の申告を円滑に進めるためのポイントをまとめます。

早期着手が重要

10ヶ月の申告期限は長いようで短いものです。戸籍の収集、財産の調査・評価、遺産分割協議には想像以上に時間がかかります。相続発生後1ヶ月以内に全体のスケジュールを立て、3ヶ月以内に財産の調査を完了させることを目標にしましょう。

専門家の活用

相続税申告に強い税理士に依頼することで、適切な特例の適用や財産評価の最適化が期待できます。税理士報酬は相続財産から控除できませんが、結果として節税効果が報酬を上回ることも少なくありません。

遺産分割は期限内に

遺産分割が申告期限までにまとまらない場合は、法定相続分で仮の申告を行い、分割確定後に更正の請求または修正申告を行います。ただし、この場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が一時的に適用できない点に注意が必要です(「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで対応可能)。

相続税申告のご相談はお早めに

申告期限まで時間がない方、遺産分割でお困りの方は、相続専門の税理士にご相談ください。

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よくある質問

相続税の申告が不要なケースはありますか?
遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下の場合、相続税の申告は不要です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用して税額がゼロになる場合は、申告が必要です。
申告期限に間に合わない場合はどうなりますか?
申告期限(死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内)を過ぎると、無申告加算税(原則15~20%)と延滞税が課されます。期限後申告でも、自主的に早く申告すれば加算税が軽減される場合があります。なお、遺産分割協議がまとまらない場合でも、法定相続分で仮申告を行うことで期限内申告とすることができます。
相続税の申告は自分でもできますか?
法律上、相続税の申告は自分でも可能です。ただし、不動産の評価や各種特例の適用には専門知識が必要であり、計算ミスによる過大納付や過少申告のリスクがあります。特に遺産総額が大きい場合や不動産が含まれる場合は、税理士への依頼をお勧めします。
相続税申告の費用はどれくらいですか?
税理士に依頼する場合の報酬は、遺産総額の0.5~1%程度が目安です。遺産総額5,000万円の場合で25万~50万円程度となります。ただし、不動産の数や相続人の人数によって加算される場合があります。費用は相続税の債務控除の対象にはなりません。
準確定申告と相続税申告は別ですか?
はい、別の手続きです。準確定申告は被相続人の1月1日から死亡日までの所得に対する所得税の申告で、期限は死亡を知った日の翌日から4ヶ月以内です。相続税申告は取得した遺産に対する申告で、期限は10ヶ月以内です。両方の期限に注意が必要です。