相続税対策の方法と節税テクニック

相続税対策の基本的な考え方

相続税対策は大きく3つのアプローチに分けられます。それぞれの方法を組み合わせることで、より効果的な節税が可能になります。

アプローチ内容代表的な方法
課税対象を減らす相続財産の総額を減らす生前贈与、寄附、消費
評価額を下げる財産の相続税評価額を下げる不動産活用、小規模宅地等の特例
非課税枠を増やす控除や非課税枠を最大限活用する生命保険、養子縁組、配偶者控除

相続税対策を検討する際は、まず現在の資産状況を正確に把握し、相続税の概算額を算出することが出発点です。その上で、将来の生活資金とのバランスを考慮しながら、無理のない範囲で対策を実施していくことが重要です。

⚠ 過度な節税対策にご注意

行き過ぎた節税対策は、税務調査で否認されるリスクがあります。特に経済的合理性のない取引や、租税回避を目的とした行為は、税務署から厳しくチェックされます。節税と脱税の境界線を正しく理解した上で対策を講じましょう。

生命保険を活用した対策

生命保険の死亡保険金には、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。これは相続税対策として非常に有効であり、多くの方が活用しています。

生命保険の非課税枠の仕組み

被相続人の死亡により相続人が受け取る生命保険金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となりますが、一定額までは非課税となります。例えば、法定相続人が3人の場合、500万円×3人=1,500万円までの保険金が非課税となります。

生命保険活用のポイント

生命保険を相続税対策に活用する際のポイントは以下の通りです。

  • 契約形態:契約者(保険料負担者)と被保険者が被相続人、受取人が相続人という形態にすること
  • 一時払い終身保険:高齢でも加入しやすく、保険料と保険金がほぼ同額のため、現金を非課税枠分だけ保険に変える効果がある
  • 受取人の指定:遺産分割の対象外となるため、特定の相続人に確実に財産を渡す手段としても有効
  • 納税資金の確保:死亡保険金は相続手続き完了前でも受け取れるため、相続税の納税資金としても活用できる

生前贈与による対策

生前贈与は相続税対策の王道です。計画的に贈与を行うことで、相続発生時の課税対象財産を減らすことができます。

暦年贈与の活用

贈与税には年間110万円の基礎控除があります。毎年110万円以下の贈与を行えば贈与税はかかりません。例えば、子ども2人と孫3人の合計5人に毎年110万円ずつ贈与すれば、年間550万円の財産移転が可能です。10年間続ければ5,500万円の相続財産を減らすことができます。

❗ 生前贈与加算に注意

相続開始前7年以内(2024年1月1日以降の贈与から段階的に延長)の暦年贈与は、相続財産に加算されます。ただし、延長された4年間(相続開始前4〜7年前)の贈与については、合計100万円まで加算対象外となります。対策は早めに開始することが重要です。

贈与税の各種特例

特例名非課税限度額対象期限
住宅取得等資金の贈与最大1,000万円子・孫への住宅取得資金2026年12月末まで
教育資金の一括贈与最大1,500万円子・孫の教育資金2026年3月末まで
結婚・子育て資金の一括贈与最大1,000万円子・孫の結婚・子育て費用2025年3月末まで
相続時精算課税制度累計2,500万円60歳以上の親から18歳以上の子・孫恒久的制度

不動産を活用した対策

不動産は相続税評価額と時価との間に差が生じやすい資産であり、この差を利用した相続税対策が広く行われています。

現金から不動産への資産転換

現金1億円を持っている場合、相続税評価額は1億円そのままです。しかし、この1億円で不動産を購入すると、土地は路線価(時価の約80%)、建物は固定資産税評価額(時価の約60〜70%)で評価されます。さらに賃貸に出すと、借家権割合(30%)や借地権割合による評価減も加わり、現金のまま相続する場合と比べて評価額を40〜60%程度下げることが可能です。

小規模宅地等の特例の活用

自宅の敷地に小規模宅地等の特例を適用すれば、330㎡まで80%の評価減を受けることができます。事業用や賃貸用の土地にも同様の特例があります。詳しくは小規模宅地等の特例のページをご覧ください。

💡 タワーマンション節税の規制強化

2024年1月から、居住用超高層マンション(いわゆるタワーマンション)の相続税評価方法が見直されました。市場価格との乖離率に応じた補正が行われるため、従来のようなタワマン節税の効果は大幅に縮小しています。

養子縁組による対策

養子縁組をすることで法定相続人の数を増やし、相続税の基礎控除額や生命保険の非課税枠を拡大することができます。

養子縁組の効果

  • 基礎控除額の増加:法定相続人が1人増えると、基礎控除が600万円増加
  • 生命保険非課税枠の増加:法定相続人が1人増えると、500万円の非課税枠が追加
  • 死亡退職金非課税枠の増加:同様に500万円の非課税枠が追加
  • 税率の低下:法定相続人が増えることで、各人の法定相続分が減り、適用税率が下がる可能性

ただし、相続税法上、養子として認められる人数には制限があります。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。また、節税目的のみの養子縁組は否認されるリスクがあるため注意が必要です。

その他の節税方法

墓地・仏壇の生前購入

墓地、墓石、仏壇、仏具などの祭祀財産は相続税の非課税財産です。これらを生前に購入しておくことで、現金という課税財産を非課税財産に変えることができます。ただし、ローンで購入した場合の未払い分は債務控除の対象外となります。

配偶者の税額軽減

配偶者は法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額まで相続税がかかりません。この制度を活用することで、一次相続の税負担を大幅に軽減できます。ただし、二次相続を含めたトータルの税負担を考慮することが重要です。

生命保険非課税枠計算ツール

法定相続人の数を入力して、生命保険の非課税限度額を計算できます。

養子を含む法定相続人の人数を入力してください(相続税法上の制限適用後)

生命保険の非課税限度額

500万円 × 法定相続人の数

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参考:基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

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⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。

よくある質問

相続税対策はいつから始めるべきですか?
相続税対策は早ければ早いほど効果的です。特に生前贈与を活用する場合、長期間にわたって行うことで非課税枠を最大限活用できます。相続発生前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため(2024年以降の贈与から段階的に延長)、できるだけ早い段階で開始することをお勧めします。
生命保険の非課税枠は誰でも使えますか?
生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は、相続人が受け取る死亡保険金に適用されます。相続人以外が受け取る保険金には非課税枠は適用されません。また、相続放棄した人が受け取る保険金にも非課税枠は適用されません。
生前贈与と相続、どちらが税率が低いですか?
一般的に、相続税より贈与税の方が税率は高く設定されています。しかし、年間110万円の基礎控除を活用した暦年贈与や、各種の贈与税の特例を利用することで、結果的に相続税の負担を軽減できるケースが多くあります。
不動産投資は相続税対策になりますか?
はい、不動産は相続税評価額が時価より低くなる傾向があるため、現金を不動産に変えることで相続財産の評価額を下げることができます。さらに賃貸物件の場合は借家権割合・借地権割合による評価減も適用され、加えて小規模宅地等の特例が使える場合があります。
相続税対策を税理士に相談するメリットは何ですか?
相続税に精通した税理士は、個々の資産状況や家族構成に応じた最適な対策プランを提案できます。また、税法の改正情報にも精通しており、最新の制度を活用した節税策を実行できます。誤った対策による追徴課税のリスクも回避できます。