相続税の税務調査対策ガイド

税務調査の概要

相続税の税務調査とは、税務署が相続税の申告内容が正しいかどうかを確認するために行う調査です。国税庁の発表によると、相続税の実地調査件数は年間約1万件以上に上り、調査を受けた約85%のケースで申告漏れが指摘されています。

相続税は他の税目と比較して税務調査の割合が高く、特に遺産総額が大きい場合や申告内容に疑義がある場合は調査の対象になりやすいとされています。適切な対策を講じることで、税務調査によるリスクを最小限に抑えることができます。

ℹ 税務調査の種類

税務調査には「任意調査」と「強制調査(マルサ)」の2種類があります。通常の相続税調査はほとんどが任意調査であり、事前に税務署から調査日程の連絡があります。強制調査は悪質な脱税が疑われる場合にのみ行われます。

税務調査の対象になりやすいケース

以下のようなケースは、税務調査の対象になりやすいとされています。該当する場合は特に注意して正確な申告を行いましょう。

遺産総額が大きい

遺産総額が2億円を超えるような場合は、税務調査の優先度が高くなります。特に3億円以上の場合はほぼ確実に調査が行われると考えておくべきです。

名義預金の疑い

被相続人の収入に対して預貯金残高が少ない場合や、家族名義の預金が多い場合は、名義預金(実質的に被相続人の財産)の疑いがあるとして調査対象になりやすくなります。名義預金は相続税の申告漏れで最も多い項目の一つです。

生前の資産移動

被相続人の口座から死亡前に多額の引き出しがある場合や、家族への生前贈与が多い場合は、贈与税の申告の有無や相続財産への加算が適切に行われているかが確認されます。

海外資産の保有

被相続人が海外に口座や不動産を持っていた場合、国際的な情報交換制度(CRS)を通じて税務署が情報を把握している可能性があります。海外資産の申告漏れは重点的にチェックされます。

税務調査の流れ

  1. 1

    事前通知(調査の約2週間前)

    税務署から納税者または税理士に電話で連絡があり、調査日程・場所・対象税目などが通知されます。日程の変更を依頼することも可能です。

  2. 2

    実地調査(通常1〜2日間)

    調査官が自宅等を訪問し、被相続人の生前の生活状況、財産管理の方法、相続人との関係などについて聞き取り調査を行います。書類の確認も行われます。

  3. 3

    金融機関等への照会

    必要に応じて、金融機関や証券会社等に対して預金残高や取引履歴の照会が行われます。被相続人だけでなく相続人の口座も調査対象になることがあります。

  4. 4

    調査結果の説明

    調査の結果、申告漏れや計算誤りが見つかった場合は、その内容と追徴税額について説明があります。納税者が修正申告に応じるか、税務署が更正処分を行うかが決まります。

  5. 5

    修正申告または更正処分

    申告漏れがあった場合は、修正申告書を提出するか、税務署による更正処分が行われます。これに伴い、加算税と延滞税が課されます。

税務調査の対策

税務調査に備えるためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

正確な財産調査と申告

最も効果的な税務調査対策は、正確かつ網羅的な財産調査に基づく適正な申告を行うことです。預貯金は過去5年以上の取引履歴を確認し、名義預金がないかを事前にチェックしましょう。不動産は登記情報を確認し、被相続人の名義の財産をすべて把握します。

書面添付制度の活用

税理士法第33条の2に基づく書面添付制度を活用すると、税務調査の前に税理士に対する意見聴取が行われます。この意見聴取で疑問点が解消されれば、実地調査が省略されることもあります。

生前からの準備

生前に財産目録を作成しておくことは、相続税申告の際に大きな助けになります。預金通帳や証券口座の一覧、不動産の固定資産税通知書、生命保険の証書などを整理しておきましょう。

❗ 税理士への相談

相続税の申告は税理士に依頼することを強くお勧めします。特に遺産総額が大きい場合や複雑な財産構成の場合は、相続税に精通した税理士に依頼することで、適正な申告と税務調査リスクの低減を図ることができます。

加算税の種類と税率

申告漏れや無申告が発覚した場合、本来の税額に加えて加算税が課されます。加算税には以下の種類があります。

加算税の種類原因税率重い場合
過少申告加算税申告額が少なかった10%50万円超の部分は15%
無申告加算税期限までに申告しなかった15%50万円超の部分は20%
重加算税(過少申告)仮装・隠蔽した35%
重加算税(無申告)仮装・隠蔽+無申告40%

なお、過少申告加算税は、税務調査の事前通知前に自主的に修正申告した場合は課されません。事前通知後から調査による更正予知前の間に修正申告した場合は5%(50万円超の部分は10%)に軽減されます。

加算税計算ツール

本来の税額と申告した税額、加算税の種類を入力して、追徴される加算税の概算額を計算できます。

税務調査で指摘された後の正しい税額

当初申告した税額(無申告の場合は0)

加算税額(概算)

※追加本税額に対する加算税です。延滞税は別途発生します。

-

追加納付税額(差額)

-

⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。

よくある質問

相続税の税務調査はどのくらいの確率で行われますか?
相続税の税務調査は、申告件数の約20〜25%に対して実施されています。特に遺産総額が2億円を超える場合や、申告内容に不審な点がある場合は調査の対象になりやすくなります。
税務調査はいつ頃行われますか?
相続税の税務調査は、通常、申告から1〜2年後に行われることが多いです。8月から12月にかけての時期に集中する傾向があります。ただし、申告期限から5年以内(悪質な場合は7年以内)であれば調査が行われる可能性があります。
税務調査を拒否することはできますか?
任意調査(通常の調査)の場合、法的には拒否できますが、正当な理由なく拒否すると罰則が適用される場合があります。調査に誠実に対応することが最善の策です。日程の変更を依頼することは可能です。
税務調査で何を聞かれますか?
被相続人の生前の生活状況、収入・支出の状況、預貯金の管理方法、不動産の利用状況、生前贈与の有無、名義預金の有無などが主な質問内容です。相続人全員の財産状況についても確認されることがあります。
修正申告と更正の違いは何ですか?
修正申告は納税者が自主的に申告内容を訂正するもので、更正は税務署が職権で申告内容を修正するものです。修正申告の場合は過少申告加算税の軽減措置がありますが、更正の場合は加算税が全額課されます。