生前贈与の方法と節税シミュレーション

生前贈与とは

生前贈与とは、被相続人が生きているうちに、自分の財産を子供や孫などに無償で譲り渡すことをいいます。相続税対策として最も広く活用されている手法の一つであり、計画的に行うことで相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することができます。

生前贈与には、毎年の基礎控除110万円を活用した「暦年贈与」のほか、「相続時精算課税制度」「教育資金の一括贈与」「住宅取得資金の贈与」「結婚・子育て資金の一括贈与」など、さまざまな制度があります。それぞれの制度には要件や非課税限度額が異なるため、自分の状況に合った方法を選択することが重要です。

生前贈与を行う際には、贈与税の負担と相続税の節税効果を比較し、トータルで有利になるように計画を立てる必要があります。また、令和6年(2024年)の税制改正による相続開始前7年内加算ルールの影響も考慮しなければなりません。

生前贈与の方法

生前贈与にはさまざまな方法があり、それぞれに特徴と適した活用場面があります。主な方法を解説します。

暦年贈与(年間110万円の基礎控除を活用)

最も基本的な方法で、毎年110万円の基礎控除を活用して少しずつ財産を移転します。長期間にわたって行うことで大きな効果が得られますが、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、早い段階から始めることが重要です。

教育資金の一括贈与(最大1,500万円非課税)

30歳未満の子・孫に対して、教育資金として一括で贈与する場合、1,500万円まで非課税となる制度です。金融機関に専用口座を開設し、教育費の支払いに充てる必要があります。

住宅取得資金の贈与(最大1,000万円非課税)

18歳以上の子・孫が住宅を取得するための資金を贈与する場合、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外は500万円まで非課税となる制度です。

おしどり贈与(配偶者控除2,000万円)

婚姻期間20年以上の配偶者に対して、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与する場合、基礎控除110万円に加えて2,000万円まで非課税となる制度です。

メリット・デメリット

生前贈与のメリット

  • 相続財産の圧縮:生前に財産を移転することで、相続時の課税対象となる財産を減らすことができます
  • 贈与者の意思を反映:贈与者が元気なうちに、誰にどの財産を渡すかを自分で決められます
  • 相続争いの予防:生前に財産を分配することで、相続時の遺産分割トラブルを軽減できます
  • 値上がり益の移転:将来値上がりが見込まれる財産を早期に贈与することで、値上がり分の相続税を回避できます
  • 収益資産の移転:賃貸物件などの収益資産を贈与すれば、その後の賃料収入も受贈者に帰属し、贈与者の財産増加を抑えられます

生前贈与のデメリット

  • 贈与税の負担:贈与税は相続税よりも税率が高いため、多額の贈与は税負担が重くなります
  • 不動産のコスト:不動産の贈与には不動産取得税・登録免許税がかかり、相続より割高です
  • 7年内加算ルール:相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、直前の贈与は効果が限定的です
  • 撤回不能:一度贈与を実行すると原則として取り消せないため、慎重な判断が必要です

❗ 生前贈与の判断基準

生前贈与が有利かどうかは、「相続税の限界税率」と「贈与税の実効税率」の比較で判断します。相続税の限界税率が贈与税の実効税率を上回る場合、贈与税を支払ってでも生前贈与をした方がトータルで節税になります。

7年内加算ルール

令和6年(2024年)の税制改正により、相続開始前の贈与で相続財産に加算される期間が従来の3年から7年に延長されました。これは暦年課税による贈与に適用され、相続時精算課税制度による贈与には適用されません。

この改正により、相続税対策としての暦年贈与は、より早い段階から計画的に行う必要が出てきました。相続開始の7年以上前に行った贈与は加算の対象外となるため、元気なうちから長期間にわたって贈与を続けることが重要です。

⚠ 経過措置に注意

延長された4年間(相続開始前4年目から7年目までの期間)に受けた贈与については、その合計額から100万円を控除した残額が加算対象となります。つまり、延長期間の贈与は100万円まで加算されない経過措置が設けられています。なお、従来の3年以内の贈与はこれまでどおり全額が加算対象です。

加算ルールの対象となるのは、相続または遺贈により財産を取得した人への贈与です。相続人以外の人(例:孫で代襲相続人でない場合)への贈与は、遺贈がない限り加算の対象外となるため、孫への直接贈与は引き続き有効な節税手法です。

生前贈与節税シミュレーター

年間贈与額と贈与年数を入力して、暦年贈与による節税効果を確認できます。一般税率で計算します。

万円

1人の受贈者に対する年間の贈与額(万円)

贈与を継続する年数

贈与総額

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贈与税合計

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相続税節税額

贈与がなかった場合との比較

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差引節税額

相続税節税額 - 贈与税合計

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⚠ この計算結果はあくまで概算です。正確な金額は税理士にご相談ください。税制改正により計算方法が変更される場合があります。

よくある質問

生前贈与は誰にでもできますか?
生前贈与は親族に限らず誰にでも行うことができます。ただし、贈与税の特例税率(優遇税率)は直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与にのみ適用されます。また、教育資金や住宅取得資金の非課税制度は、適用対象者が限定されています。
生前贈与と相続はどちらが税金面で有利ですか?
財産額や相続人の構成によって異なります。一般的に、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える財産がある場合、生前贈与による計画的な財産移転が有利になるケースが多いです。ただし、贈与税は相続税よりも税率が高いため、相続税率と贈与税率を比較して最適な方法を選択する必要があります。
不動産の生前贈与にはどのような費用がかかりますか?
不動産の生前贈与には、贈与税のほかに不動産取得税(固定資産税評価額の3~4%)、登録免許税(固定資産税評価額の2%)、司法書士報酬などがかかります。相続の場合は不動産取得税が非課税、登録免許税も0.4%と低いため、不動産については相続の方が有利なケースが多いです。
7年内加算ルールの経過措置はありますか?
令和6年(2024年)1月1日以降の贈与から段階的に加算期間が延長されます。令和9年(2027年)の相続から順次延長され、令和13年(2031年)以降の相続で完全に7年加算が適用されます。また、延長された4年間(4年目から7年目)の贈与については、合計100万円までは加算対象外となる経過措置があります。